それは、私が一人暮らしを始めて間もない、ある週末の夜のことでした。友人を招いて、張り切って唐揚げパーティーを開いたのです。大量の鶏肉を揚げ、楽しい時間を過ごした後、残った大量の廃油の処理に、私は少しだけ、頭を悩ませました。固めるタイプの凝固剤は切らしている。新聞紙に吸わせるのも面倒だ。そして、私は、若さゆえの、そして無知ゆえの、最悪の判断を下してしまったのです。「少量ずつなら、大丈夫だろう」。そう自分に言い聞かせ、熱いままの油を、水と一緒に、キッチンのシンクへと流してしまいました。その時は、何事もなく、油はスムーズに流れていったように見えました。しかし、悪夢の始まりは、その翌朝に訪れました。朝食の準備をしようと、シンクで水を流すと、水が全く流れていかないのです。それどころか、排水口の奥から、ゴボゴボという、不気味な音が聞こえてきます。シンクは、あっという間に、洗い物の水で湖のようになってしまいました。パニックになった私は、慌ててラバーカップを試しましたが、効果はなし。市販のパイプクリーナーを丸ごと一本投入しても、状況は一向に改善しませんでした。もう、自力では無理だ。そう観念した私は、震える手で、スマートフォンの画面をなぞり、「キッチン 詰まり 修理 24時間」と、検索しました。駆けつけてくれた作業員の方は、私の話を聞くと、静かに頷き、業務用の高圧洗浄機で、作業を始めました。そして、わずか数分後、排水管の中から引きずり出されてきたのは、私の想像をはるかに超える、白く固まった、巨大な油の塊でした。昨夜流した油が、排水管の中で冷え固まり、そこに他の汚れが絡みついて、完全に管を塞いでしまっていたのです。作業員の方から、油を流すことの危険性について、懇切丁寧なレクチャーを受けながら、私は、自分の無知と、たった一度の「まあ、いいか」という油断が招いた、この悲劇的な結果を、深く、深く反省しました。あの日の、シンクに溜まっていく濁った水と、高額な修理費用は、私にとって、忘れられない教訓となっているのです。
私がキッチン排水溝を詰まらせた日