ペットを飼っているご家庭で、絶対にやってはいけない危険な行為。それが、「ペットのトイレ砂を、トイレに流して処分する」ことです。製品のパッケージに、「トイレに流せる」と書かれているから、大丈夫だろう。そう安易に考えてしまうかもしれませんが、その判断が、あなたの家の排水設備に、取り返しのつかない、深刻なダメージを与える、引き金になる可能性があるのです。なぜ、ペットのトイレ砂を、トイレに流してはいけないのでしょうか。その理由は、トイレ砂の「材質」と、日本の「排水管の構造」にあります。まず、トイレ砂の材質です。「流せる」と謳われている製品の多くは、紙や、おから、木材といった、水に溶ける、あるいは崩れる素材で作られています。しかし、ここで重要なのは、それらが、トイレットペーパーのように「瞬時に水に溶けて、繊維レベルまで分解される」ようには、設計されていない、という点です。これらの砂は、水を吸うと、一時的にほぐれたり、柔らかくなったりはしますが、完全には溶けません。そのため、排水管の、流れが緩やかになる曲がり角(トラップやベンド管)などで、堆積しやすく、それが核となって、他の排泄物や、トイレットペーパーを巻き込み、徐々に、しかし確実に、水の通り道を塞いでいってしまうのです。特に、鉱物(ベントナイトなど)で作られた、固まるタイプの砂は、水を含むと、粘土のように硬く固まり、排水管の内部で、コンクリートのような、頑固な閉塞物を形成するため、絶対に流してはいけません。次に、日本の排水管の構造も、問題を深刻化させます。日本の住宅の排水管は、欧米に比べて、直径が細く、勾配も緩やかに設計されていることが多いため、そもそも、固形物を流すのに適した構造ではないのです。たとえ、「少量ずつなら大丈夫」と思っていても、その「少量」が、見えない排水管のどこかで、日々、蓄積されている可能性は十分にあります。そして、ある日突然、完全に流れなくなり、便器から汚水が逆流してくる、という最悪の事態を招くのです。そうなると、もはやラバーカップでは対処できず、高圧洗浄などの、高額な専門工事が必要となります。ペットのトイレ砂は、必ず、製品の指示に従って、可燃ゴミとして処分する。その一手間が、あなたの家の、そしてマンションであれば、建物全体の排水設備の平和を守るための、飼い主としての、重要な責任なのです。