「まだ使えるから」「少しの水漏れくらいなら大丈夫だろう」そう考えて、カランの交換を怠ると思わぬトラブルや損害につながる可能性があります。実際にあった事例をもとに、放置のリスクについて考えてみましょう。都内マンションに住む佐藤さん(仮名)は、洗面所のカランのハンドル下からの水漏れに数ヶ月前から気づいていました。ポタポタと垂れる程度だったため、「そのうちパッキンでも交換しよう」と軽く考え、そのままにしていました。しかし、ある朝、洗面所に入ると床一面が水浸しになっているのを発見。驚いて原因を探ると、カランの内部部品が完全に破損し、夜間の水圧が高い時間帯に大量の水が漏れ出したようでした。幸い、早期に発見できたため階下への漏水は免れましたが、洗面所の床材は水を吸ってしまい、一部張り替えが必要となりました。カラン本体の交換費用に加え、予想外の床の修繕費がかかり、佐藤さんは「もっと早く交換しておけば…」と後悔しました。別のケースでは、古いツーハンドル混合水栓の操作が硬くなっていたにも関わらず、無理に力を入れて使い続けていた鈴木さん(仮名)の例があります。ある日、お湯を出そうとハンドルを捻った瞬間、「バキッ」という音と共にハンドルが根元から折れてしまいました。折れた部分からお湯が噴き出し、慌てて止水栓を閉めようとしましたが、長年動かしていなかった止水栓も固着しており、すぐには閉められません。結局、水道業者を緊急で呼ぶことになり、高額な緊急対応料金を支払う羽目になりました。さらに、噴き出したお湯で壁紙が濡れてしまい、その補修も必要になったのです。これらの事例から分かるように、カランの水漏れや操作不良は、単に水道代が無駄になるだけでなく、放置することで内部部品の劣化を進行させ、突然の大量漏水や部品の破損といった、より深刻な事態を引き起こす可能性があります。特にマンションなどの集合住宅では、階下への漏水事故に発展すると、損害賠償問題にもなりかねません。また、古いカランは内部構造が複雑だったり、部品が手に入りにくかったりするため、早めに交換した方が結果的に費用を抑えられる場合もあります。カランの不具合に気づいたら、決して軽視せず、早めの点検・修理、または交換を検討することが、住まいの安全と経済的な損失を防ぐ上で非常に重要と言えるでしょう。